最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)1046号 判決 1961年7月07日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人松村勘次の上告理由第一点について。
記録によれば、昭和三三年六月二日の原審最終口頭弁論期日において、附帯控訴代理人が附帯控訴状に基き本件附帯控訴の趣旨を陳述したのに対し、附帯被控訴人たる上告人の代理人において、何ら異議を止めることなく、附帯控訴棄却の判決を求める旨申立て、そのまま弁論終結に至つたことが明らかである。
然りとすれば、仮りに、右附帯控訴状が当時未だ提出、送達されていなかつたこと所論のとおりであるとしても、上告人が当審においてこれを原判決に対する不服の理由とすることは、民訴一四一条により許されないものと解するのが相当であつて(論旨中違憲をいう部分は、前提を欠く。)、論旨は採用し得ない。
同第二点について。
原判決挙示の証拠により原判示事実を認定したことにつき何ら違法の点は認められない。所論は、原審の適法な証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰するから、採用し難い。
上告人の上告理由について。
請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、請負人に対し修補を請求したがこれに応じないので、修補に代る損害の賠償を請求する場合においては、右修補請求の時を基準として損害の額を算定するのが相当である。
されば、これと同旨にいでた原審の判断は相当であつて、論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)